送る前に必ず本人に聞く3つのこと
善意の物資が「置き場がない」「もう足りている」で負担になることがあります。送る前に本人へ次の3点を確認してください。
- 今いちばん足りないものは何か(想像で選ばない。おむつのサイズ、生理用品の種類など具体的に)。
- 荷物を受け取れる場所はどこか(自宅か、避難先か、近くのコンビニ・営業所か)。
- いつ受け取れるか(避難所には個人宛の宅配便が届かない・受け取れないことがあります)。
配送は止まっていないか確認する
被災直後は宅配各社が該当地域への引き受け停止・遅延を発表します。各社の公式サイトに「お知らせ」として掲出されるので、発送前に確認してください。通販で送る場合も、注文画面で配送可否・お届け予定日が表示されます。「即日届くはず」という前提は災害時には成り立たない、と考えておくのが安全です。
自宅で受け取れない時: コンビニ受取・営業所受取
- 通販の多くは、自宅以外にコンビニ受取や運送会社の営業所受取を指定できます。避難先の近くで開いている店舗を本人に選んでもらうと確実です。
- 受取には本人確認や認証番号が必要な場合があります。注文時のメールを本人に転送しておきましょう。
- 保管期限を過ぎると返送されます。期限は各社・各サービスで異なるため注文画面の表示を確認し、本人が取りに行ける日程を確かめてから注文を。
自分の車で運ぼうと考えたとき
結論から言うと、発災直後に自家用車で被災地へ向かうのは原則として避けてください。「宅配より速い」「自分で持って行けば確実」と考えたくなりますが、災害直後の道路は、その車1台分の余裕がない状態になっています。
令和6年能登半島地震では、石川県が管理する道路で最大93か所が通行止めになりました(2024年1月5日時点)。内閣府の報告書は、このとき何が起きたかをこう書いています。「多くの道路で通行止め等が発生した能登半島では、被災地に流入する車両が一部の道路に集中することにより、各地で渋滞が発生し、支援物資の運搬や復旧作業の支障となった」。1月7日から交通規制が行われ、あわせて「被災地域に向かう一般車両の利用自粛に係る広報啓発」も行われました。善意で向かう車も、道路の上では渋滞をつくる1台として数えられます。
もう一つ見落とされやすいのが燃料です。同報告書は、発災初期にガソリンスタンドの給油待ちの行列が道路を渋滞させ、緊急車両の通行や給油そのものが妨げられたと指摘しています。現地で給油する前提で向かうと、この行列に自分も並ぶことになります。
「緊急交通路」に指定された道は、一般車両は通れない
災害時には、法律にもとづいて一般の車が通れなくなる道路が生じます。災害対策基本法第76条第1項は、都道府県公安委員会が道路の区間や区域を指定して、緊急通行車両(救急・消防・警察などの緊急自動車と、災害応急対策のために通行の確保が特に必要だと政令で定める車両)「以外の車両の道路における通行を禁止し、又は制限することができる」と定めています。支援物資を積んだ自家用車はここに入りません。
指定された区間の中にいた場合、運転者には法律上の義務が生じます。同法第76条の2は、速やかに区間外へ車を移動すること、それが難しいときは「できる限り道路の左側端に沿つて駐車する等緊急通行車両の通行の妨害とならない方法により駐車」することを求めています。さらに第76条の3では、車が緊急車両の通行の妨げになっている場合に警察官が自ら移動措置をとることができ、「当該措置をとるためやむを得ない限度において、当該措置に係る車両その他の物件を破損することができる」と規定されています。置き方が悪ければ壊されうる、ということです。
指定されるかどうかも、どの道が対象になるかも、災害ごとにまったく違います。高速道路が十数日間指定された災害もあれば、一般道を中心に1年以上かかった災害も、運搬車両向けの指定が行われなかった災害もあります。「前の災害ではこうだった」は使えません。出発前にその時点の情報を確認してください。
道路が通れるかを調べる
規制は数時間単位で変わります。当サイトは区間を転記しません。調べる先は2種類だけ覚えてください。
- その都道府県の防災ポータルの「通行規制情報」 国道・県道だけでなく市町村道まで、規制の原因・日時・解除が一覧で出ます。県内を調べるならまずここ。県名と「防災ポータル 通行規制」で探せます
- 日本道路交通情報センター(JARTIC) 高速・一般道を24時間・5分更新。災害時は「災害時情報提供サービス」が提供地域を広げます
自動車メーカーの「通行実績マップ」は、この記事では調べ先に挙げません。あれは「通れた」記録であって「通れる」保証ではないためです。提供元自身がそう書いています ―― トヨタは「通行実績がある道路でも、その後の状況変化や交通規制等により通行できない場合があります」、ホンダは「実際の走行にあたっては、必ず現地での規制、誘導に従ってください」。過去に通れた道を頼りに出発すると、着いてから引き返すことになります。使うなら、上の2つで規制を確認したうえでの補助にとどめてください。
そもそも受け取ってもらえるか: 個人の物資は断られることがある
運ぶ手段の前に確認すべきことがあります。自治体は、個人からの物資を受け取らないと明示することがあります。備蓄と協定企業からの供給で足りる見込みが立つと、個人からの持ち込みは仕分けと保管の負担のほうが大きくなるためです。企業・団体からは事前登録制で受け付ける、という形も取られます。受け入れの可否は市町村ごとに違い、日によっても変わります。送り先の市町村の公式サイトで「義援物資」を確認してください。
ボランティアとして人手を出す場合も同じで、受け入れの器ができるまでには時間がかかります。発災直後は安全確認と被害把握が優先され、災害ボランティアセンターの設置は数日から1週間ほど遅れて始まるのが通例です。始まったあとも、事前登録制・活動日の指定・市町村ごとの募集範囲(県内在住者に限るなど)が付くのが普通です。能登半島地震でも、発災直後は直接の被災地入りを控える呼びかけが出され、一般ボランティアは金沢市内などから発着するバスで現地に入る形になりました。「今すぐ」と「そのうち」は分けて考えてください。いまの受け入れ状況は、下の2つで確認できます。
- 被災地支援・災害ボランティア情報(全国社会福祉協議会) 全国の災害ごとの受け入れ状況。どの災害でもここから入れます。県外から向かう場合の募集範囲もここで確認できます
- その都道府県の社会福祉協議会 市町村ごとのセンターの設置場所・募集開始日・活動開始日は、県の社協が一覧で出します。県名と「災害ボランティア」で探せます
「自分で運ぶ/送る/待つ」をどう決めるか
- 送る(原則こちら): 本人が受け取れる場所と日時を答えられて、その地域への配送が動いている。この2つが揃っているなら宅配便か通販で送ってください。道路を1台も増やさずに届く方法です。
- 自分で運ぶ: 次の5つがすべて揃っているときだけ検討してください。①本人が「持ってきてほしい」と言っている ②届け先が個人の家で、避難所や自治体の窓口ではない ③往復の経路が通れることを出発直前に確認した ④燃料・食事・トイレ・宿泊を現地に頼らず往復できる ⑤渋滞に入っても引き返せる時間の余裕がある。1つでも欠けたら、それは支援ではなく渋滞に変わります。
- 待つ: 上が揃わないとき。物資の代わりに義援金・支援金を選ぶ、受け入れ体制ができてから動く、という判断も支援です。物資と違って保管場所も仕分けの人手も要りません。
車で向かうと決めた場合の最低限は、出発直前にもう一度規制を確認する/幹線に集中しないよう経路を選ぶ/現地で給油も買い物もしない/避難所へ直接持ち込まない、の4つです。避難所に個人が物資を持ち込むと、受け取りと仕分けの人手をその場で奪います。
喜ばれやすいもの・かえって困るもの
- 喜ばれやすい: 飲料水、そのまま食べられる食品、生理用品、紙おむつ(サイズ指定)、からだふき、非常用トイレ、乾電池、モバイルバッテリー、使い捨てカイロ(冬)など「毎日消費するもの」。
- 注意が必要: 冷蔵・冷凍品(停電中は保存できない)、大量の古着(保管と仕分けが負担)、賞味期限が近い食品。
- 薬(処方薬・常備薬)は自己判断で送らず、本人が医師・薬剤師・避難所の救護班に相談するのが原則です。
現地の状況を離れた場所から把握するには
本人と連絡が取りづらい時間帯でも、トップページの住所検索で家族が住む地域の停電・断水・地震の公式発表を確認できます。「今どういう状況の地域なのか」を知ってから連絡すると、聞くべきことが絞れます。
参考: 宅配各社の災害時の配送に関する公表情報・自治体の支援物資に関する案内を基に、一般的な手順として整理したものです。自家用車で運ぶ場合の記述は次の一次資料に基づきます。内閣府中央防災会議 防災対策実行会議「令和6年能登半島地震を踏まえた災害対応の在り方について(報告書)」(2024年11月)/災害対策基本法第76条・第76条の2・第76条の3(e-Gov法令検索)。条文の引用は2026年8月5日に e-Gov の法令データで原文と照合しています。