東日本大震災・熊本地震の記録から

被災中に必要になるもの一覧

「防災の備え」ではなく、いま被災していて店が閉まっている方と、離れた場所から物資を送りたいご家族のための一覧です。過去の大災害の公的記録から、実際に不足したものと必要数の目安を、困りごと別にまとめました。

更新: 2026年7月29日 出典: 内閣府・熊本県ほか公的資料11点 数量の目安は国の公表値に基づく
記録に残る事実

東日本大震災では、内閣府が「県や市役所に物資が集まっていても、各避難所に物資が届かない」問題を記録しています。熊本地震では熊本県が「車中泊等の実態把握が困難であり、物資の支援や情報提供が不十分であった」と課題に挙げました。熊本では避難した人の68.3%が車の中で夜を過ごしています。

避難所にいない人ほど支援物資が届きにくい——これが繰り返し記録されている現実であり、自分で調達する手段を持っておく理由です。出典はページ末尾にまとめています。

困りごと

断水したとき

携帯トイレ・簡易トイレ(凝固剤タイプ)

最初に困るのはトイレです。内閣府が被災29自治体に行った調査では、仮設トイレが避難所に行き渡るまで3日以内だったのは34%だけで、8〜14日が28%、最長では65日かかりました。熊本地震では、水を汲んで流す運用からノロウイルスが発生した避難所の記録もあります。

目安1人1日5回。まず3日分(1人15回分)から。国は1週間分(1人35回分)を推奨しています。4人家族の3日分なら60回分です。

飲料水

仙台市の188避難所が出した要望書では、水が143避難所で最多の要望でした。断水は東日本大震災で約257万戸、熊本地震で約44.6万戸。熊本市は本管の復旧に14日かかり、東日本では事業体によって10日〜6ヶ月と幅がありました。

目安1人1日3L(飲用+調理)。3日分で9L、2Lボトルなら約5本です。

給水袋・折りたたみウォータータンク

給水車が来ても、水を持ち帰る容器がなければ受け取れません。熊本県は備蓄から携帯用飲料水袋3,000個を配布しています。リュックで背負える型なら、階段のある住宅でも運べます。

目安10Lで約10kg。運べる重さから逆算して選んでください。

困りごと

停電したとき

モバイルバッテリー

停電は東日本大震災で東北電力管内約450万戸、熊本地震で約47.7万戸。復旧まで熊本は4日、東日本は地域により1ヶ月以上かかりました。安否連絡と情報収集がスマホに集中する以上、電池切れは孤立に直結します。

乾電池(単三より単一

見落とされがちな点です。仙台市の避難所要望では単一電池が91避難所だったのに対し、単三は44、単二は38でした。懐中電灯・ラジオ・石油ストーブの点火が単一規格を使うためで、単三ばかり備えていると足りなくなります。

LEDランタン(乾電池式)

充電式は、停電が続くと本体を充電できずに使えなくなります。乾電池式なら電池さえあれば使い続けられます。

カセットコンロ+カセットボンベ

仙台市の要望ではカセットボンベが122避難所(7位)、コンロが92避難所。東日本大震災では都市ガス約46万戸に加えてLPガスが約166万戸停止し、熊本でも都市ガス約10万戸が止まって全域復旧に14日かかりました。停電と重なると、湯を沸かす手段がこれしかありません。

目安本体よりボンベが先に切れます。ボンベは多めに。

ポータブル電源

復旧が長引く地域や、車中泊での電源確保に。熊本地震では、車中泊の人が車内の冷房のためエンジンをかけ続け、バッテリー上がりを心配していた記録があります。

困りごと

体を清潔に保つ

口腔ケア用品(液体歯みがき・歯みがきシート・義歯洗浄剤)

最も見落とされている項目です。熊本地震で亡くなった方は直接死50人に対し災害関連死が225人で、その死因の1位は肺炎などの呼吸器系疾患で28.4%、循環器系と合わせて約6割を占めました。熊本県歯科医師会は、避難所での口腔ケアについて誤嚥性肺炎の予防に一定の成果があったと報告しています。内閣府の備蓄品目にも義歯洗浄剤が明記されており、熊本では入れ歯の不具合や紛失の相談も出ています。断水中は歯ブラシとコップが使えないため、水のいらない形のものが要ります。

からだふき・ドライシャンプー

風呂に入れない期間が続きます。仙台市の要望でもウェットシートが63避難所から挙がりました。大判のものが1枚で広く拭けて効率的です。

使い捨て下着・おりものシート・中身が見えないゴミ袋

内閣府男女共同参画局の備蓄チェックシートに明記されている品目です。同シートは「避難所では物干し場がなかったり、断水により洗濯できない可能性もあるため、使い捨て下着やおりものシートがあると衛生を保つために便利です」と説明しています。東日本大震災の調査では、下着をこまめに替えられず膀胱炎や外陰炎になった例が報告されました。一般の防災リストにはまず載っていません。

ウェットティッシュ・ゴム手袋・マスク

仙台市の要望では消毒液111・マスク97・ゴム手袋78避難所。手が洗えない状況が続くうえ、ゴム手袋は片付け作業にも要ります。

困りごと

女性・赤ちゃん・高齢のご家族に

生理用品(普通用・長時間用)

仙台市の要望では100避難所から挙がりました。数だけの問題ではありません。内閣府のガイドラインは「女性用下着や生理用品が届いても配布担当が男性であったため、女性はもらいに行きづらい」と明記しています。熊本県南阿蘇村では、女性トイレの中に常備することでこの問題を解決した事例が公表されました。手元にあること自体が安心につながります。

目安国の備蓄品目は「普通、長時間向け等」と種類まで指定。夜にトイレへ行きにくい環境では長時間用が効きます。

紙おむつ・おしりふき(乳児用)

仙台市の要望でおむつが128避難所と全体の3位。サイズが合わないと使えないため、離れた家族が送る場合は必ず本人にサイズを確認してください。

液体ミルク

お湯も水も消毒も要らず、開けてそのまま飲ませられます。熊本地震ではフィンランドから提供され、西原村・益城町・熊本市の保育所で実際に使われました。国内では2019年から製造・販売されています。

注意国のガイドラインは、支援する側が一律に配ることを避け、個々の授乳の状況を確認したうえで渡すよう求めています。ご家庭で備える場合と、他の方に渡す場合とを分けて考えてください。

大人用おむつ・尿とりパッド(女性用・男性用)

熊本地震の食支援では、相談者432人のうち高齢者が282人(65.3%)と大半を占めました。内閣府の避難所チェックシートは「男性トイレ:尿取りパット等の配置」を挙げ、ガイドライン本文にも「男性にも、尿もれパッドが欲しかったが言い出せなかった」という声が記録されています。男性用も品薄になります。

介護食(やわらか食・おかゆ)・とろみ剤・使い捨て食器

非常食は高齢の方には硬すぎることがあります。熊本地震の相談で最も多かったのは「食事が硬い」14.4%(うちご飯が硬い14人)で、飲み込みにくいという相談も11.1%ありました。やわらか食が配られたのに「器がないこと、電子レンジの使い方が分からないこと」で食べられなかった例も記録されています。紙皿・スプーンを一緒に用意してください。

困りごと

避難所・車中泊で過ごす

エアマット・銀マット

熊本地震の災害関連死では、原因の30%が「避難所等生活の肉体的・精神的負担」でした。内閣府の指針も簡易ベッドやパーティションの整備を挙げています。床や車の段差から体を守ることが、そのまま体調の維持につながります。

耳栓・アイマスク

避難所で眠れないことは、それ自体が長期の負担になります。安価で場所も取りません。

ペット用品(フード・ケージ・ペットシーツ)

熊本地震で車中泊を選んだ理由の14.4%が「ペットがいたから」でした。避難所が集約された後も車中泊を続ける要因になっており、ペットの物資は支援が届きにくい部分です。

車中泊で体を動かすことについて

熊本地震では、車中泊をしていた28人が肺塞栓症を発症し、2人が亡くなりました。熊本県は保健師の巡回で予防のチラシと弾性ストッキングを配布しています。県が配ったチラシに書かれた方法は、長時間同じ姿勢でいない・足の指をこまめに動かすか歩く・適度に水分をとる・時々深呼吸をするの4つです。トイレを心配して水を控えると、かえって危険が増します。

注意日本内科学会は、弾性ストッキングの着用を勧める対象を、既往のある方や高齢の方などに絞って説明しています。市販の着圧ソックスは医療用の弾性ストッキングとは別のものです。この項目には商品リンクを置いていません。

ご注意

このページに載せていないもの

薬(処方薬・常備薬)は、自己判断で用意・送付せず、本人が医師・薬剤師・避難所の救護班に相談してください。ストーマ用装具・気管孔エプロン・吸引カテーテル・経管栄養剤・酸素ボンベなどは、ご本人に合わせた個別の適合が必要な医療機器・福祉用具で、市販品で代替できません。使用中のものを持ち出すか、自治体・医療機関を通じて調達してください。冷蔵・冷凍が必要な食品は停電中は保存できません。

あわせて確認

お住まいの地域の状況を調べる

停電・断水・地震の公式発表は、トップページの住所検索から地域を指定して確認できます。離れたご家族の地域も同じように調べられます。

出典

  1. 内閣府(防災担当)「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」 — 仮設トイレが行き渡るまでの日数、1人1日5回の目安
  2. 奥村誠ほか「東日本大震災時の救援物資ニーズの発生順序の分析」運輸政策研究 Vol.16 No.1(2013) — 仙台市188避難所の要望書データ
  3. 内閣府(防災担当)「東日本大震災における災害応急対策の主な課題」(平成24年7月) — 物資が避難所に届かなかった問題
  4. 熊本県健康福祉部「平成28年熊本地震における車中泊の状況について」 — 車中避難68.3%、弾性ストッキングの配布
  5. 内閣府「平成28年度 熊本地震における避難所運営等の事例」 — 避難所の現場記録
  6. 内閣府「災害関連死事例集(増補版)」 — 災害関連死の死因分類、熊本県歯科医師会の見解
  7. 内閣府男女共同参画局「災害対応力を強化する女性の視点」ガイドライン備蓄チェックシート — 女性用品・介護用品の品目、配布の課題
  8. 齋藤かなたほか「熊本地震において災害時要配慮者が直面した食の問題」日本健康学会誌 2021;87(2) — 高齢者65.3%、食事が硬い等の相談内容
  9. 土木学会西部支部「ライフライン被害」 — 熊本地震の断水・停電・ガスの規模と復旧日数
  10. 日本内科学会 災害医療情報「肺血栓塞栓症」 — 弾性ストッキングの着用対象
  11. 農林水産省 家庭備蓄ポータル — 1人1日3Lの目安

このページについて

  • 公表資料をもとに一般的な整理をしたものです。お住まいの自治体の案内が最優先です。
  • 数量の目安は平均的な値です。人数・年齢・持病・ペットの有無によって必要なものは変わります。
  • 本ページには広告(アフィリエイトリンク)を含みます。「探す」ボタンが表示されている項目が該当し、目次の下に「広告」と表示しています。掲載する品目は公的資料に基づいて選んでおり、報酬額では決めていません。
  • 商品の効能・効果を示すものではありません。健康上の心配があるときは医療機関や避難所の救護班にご相談ください。